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2022.04.01更新

本日は、税関の最近の事後調査の傾向をお伝えします。
最近の傾向として、税関の事後調査が進んだ段階で、税関との間で誤解が生じたなどという形で、私どもに対応をご相談いただく事例が増えてきております。

 

税関の事後調査は、新型コロナウイルス感染症が拡大する前は、通例、輸入者の事業所を2~3日訪問し、その期間で、会社の事業概要・取引概要を把握して資料の取得などを行っていました。また、その際の連絡方法も、FAX送付や郵便によることが多く、通常業務で取り扱う電子メールなどの方法ではないことから、一定程度、輸入者も注意して臨む傾向があったように思います。

 

しかし、税関の事後調査は、事業所に訪問するという性質上、新型コロナウイルス感染症拡大防止による政府の施策の影響を受けて、事後調査自体を見合わせたり、事後調査を実施するとしても訪問の日数を減らされるようになってきました。
また、資料の徴求や税関からの連絡も、メールでやりとりする事例が全国的に増えており、調査方法の効率化も進められています。

 

これらの対応の結果、輸入者が注意せずに事後調査に臨むことが生じやすくなっているように感じています。

 

もちろん、輸入者にとっても、メールでの連絡など作業の効率化は、調査に対応する負担が軽減されるという面で好ましい側面があります。ただ、その反作用として、輸入者が、事後調査に対し、しっかりと対応する気構えを持たずに事後調査対応を進めてしまい、その結果、税関からの予期せぬ指摘や疑念を招いてしまっている傾向が生まれているように思います。

 

作業の効率化に伴い、事後調査に対応する事務負担が軽くなったとしても、事後調査の内容は新型コロナウイルス感染症拡大前と後で変わるところはありません。
十分な検討をせずに、メールで回答したり、事後調査に臨んだことで、税関から無用な疑念を招いたり、誤解を与えたりすることのないようにしっかりと検討した上で対応していくことをお勧めいたします。

 

当事務所には、通関士資格を有している弁護士がおり、輸入申告方法の是非の判断業務、税関事後調査への対応業務、輸出入通関にともなう税関トラブルへのサポート業務を提供しております。ご相談をご希望の場合は、電話又はメールにて、当事務所にお気軽にお問い合わせください。ご相談のお申込みはこちらから行うことも可能です。

2021.10.01更新

新型コロナウイルス感染症の感染防止の観点から、2020年4月に緊急事態宣言が発令されて以降、2021年9月までの間、緊急事態宣言等は断続的に行われており、それに伴って、税関の事後調査の実施は全国的に抑制された状況でした。
これは、事後調査が、通常、事業所への訪問を伴っていて、長時間の接触が避けがたいことが予想されたために、税関として感染拡大を抑えるためであったと考えられます。

 

2021年10月から、感染状況が落ち着いて減少傾向になったことや新型コロナウイルス感染症に対するワクチン接種が広がったこと等から、緊急事態宣言等が解除されることになりました。
このような社会状況の変動を踏まえ、私どもに寄せられる相談においても、輸入事後調査の再開を前提とした税関の活動を伺わせる相談が増えてきており、税関が事後調査を再開する兆候を感じ取っていいます。

 

もっとも、新型コロナウイルス感染症の脅威は、未だ収束しているとまではいえないことから、税関として、人との接触機会を減らす形で事後調査を実施できるように各種の工夫を試みていることがあります。
例えば、事前に書類の提出を求めてきたり、調査の日数を限定したりといった工夫です。
こうした手法は、従来の事後調査の場面では、あまり見られなかったものです。

 

とはいえ、事後調査の本質は変わらず、税関の調査の目的や、確認しなければならない内容は従来と同一です。
したがって、事後調査に臨む事業者としても、求められる対応が大きく変わることはありません。従来の事後調査対応と同様に、事前に十分な準備をしておくことが望ましいといえます。事前に書類を提出するとしても、事後調査に臨む際と同様に、しっかりと検討した上で、書類の提出を行うことが肝要です。

 

当事務所では、輸入申告方法の是非の判断業務、税関事後調査への対応業務、輸出入通関に伴う税関・通関業者・取引先とのトラブルへのサポート業務を提供している他、貿易及び輸出入通関に関する様々なご相談に対応させていただいております。ご相談をご希望の場合は、電話又はメールにて、当事務所にお気軽にお問い合わせください。ご相談のお申込みはこちらから行うことも可能です。

2021.10.01更新

輸入を行っている事業者に対して、時折、税関から、会社概況票という書類の提出を求められることがあります。
この会社概況票は、輸入事業者の状況や、輸入に関する取引の状況等を記載するものです。税関は、こうした情報収集を行うことで、輸入事業者の情報を整理して様々な局面で活用しており、事後調査の場面でも活用しています。

 

会社概況票は、税関による一般的な情報収集の一環として行われているものであり、提出を求められたとしても、直ちに事後調査の対象になっていることを意味するものではありません。
しかし、私どもの経験上、会社概況票の提出が事後調査実施の端緒となっていたり、逆に事後調査の対象としていることを前提に会社概況表の提出を求めているのではないかと考えられる事例も経験しているところです。

 

したがって、会社概況票の提出を税関から求められた場合、当該会社概況票の記載が将来の税関の事後調査の際の基礎資料の一つとなることを踏まえ、どのような記載をすることが適切であるのか、慎重な検討をしてから対応することが輸入事業者として望ましい対応といえます。

 

当事務所では、会社概況票の記載や対応等のご相談を含め、輸入申告方法の是非の判断業務、税関事後調査への対応業務、輸出入通関に伴う税関・通関業者・取引先とのトラブルへのサポート業務を提供している他、貿易及び輸出入通関に関する様々なご相談に対応させていただいております。ご相談をご希望の場合は、電話又はメールにて、当事務所にお気軽にお問い合わせください。ご相談のお申込みはこちらから行うことも可能です。

2021.02.17更新

当事務所は、輸出入に伴う各種の通関トラブルに関して多くのご相談をいただいており、通関トラブル対応の豊富な経験を有しています。
通関トラブルには、①輸出入に関する取引の相手方とのトラブル、②税関から指摘を受ける等の税関とのトラブル、③通関業者とのコミュニケーションがうまくいかない等の通関業者とのトラブルがあります。
本記事では、通関トラブルのうち、②税関とのトラブルとしてご相談をいただく内容をいくつかご紹介します。

 

当事務所では、輸入申告方法の是非の判断業務、税関事後調査への対応業務、輸出入通関に伴う税関・通関業者・取引先とのトラブルへのサポート業務を提供している他、貿易及び輸出入通関に関する様々なご相談に対応させていただいております。ご相談をご希望の場合は、電話又はメールにて、当事務所にお気軽にお問い合わせください。

 


1 適切な申告価格で輸入申告ができていないと疑われるトラブル
関税及び輸入消費税は、輸入申告時に申告する価格(課税価格といいます。)に、所定の関税率・輸入消費税率を乗じて計算されます。そのため、輸入通関の際の申告価格が間違っていた場合には、税金の申告漏れが生じていることになります。
日本の輸入通関制度は、輸入通関時点では貨物をスムーズに流通させることを優先して、基本的に申告した価格での輸入通関を認め、事後的な調査で申告した価格が適正であったかを検証することを前提としています。
しかし、輸入通関時において、あまりに不自然な金額で課税価格を算定して申告していたり、税関の質問に対して適切な説明ができなかったりした場合には、税関に適切な輸入申告ができていないのではないかと疑問を持たれ、税関から取引に関する質問を受け、その質問に回答するまで貨物の輸入許可を受けられなくなるというトラブルに発展することがあります。
このようなトラブルは、輸入者において認識が甘く適切な検討ができていないことに原因がある場合もあれば、外国の業者が適切なインボイスを作成せず(例えば、低価のインボイスを作成してアンダーバリューになってしまっていることがあります。)に貨物を送ってくることに原因がある場合もあります。
また、輸入者としては気を付けているつもりでも、申告すべき課税価格の計算方法の理解が不十分であるため低い金額での申告をしてしまう場合もあります。例えば、日本の会社が外国の工場に商品の製造を発注してその製造物を輸入する場合に、日本の会社から外国の工場にタグや金型を無償で提供していることがあります。関税定率法に基づけば、こうしたタグや金型の代金相当額及び無償提供物を提供するために要した運賃などの諸費用を課税価格に加算して申告する必要があります(関税定率法4条1項3号)。しかし、この点を見逃してしまって、実際に低い金額で申告してしまっているケースは珍しくありません。

 

他にも、税関が検査をしたところ数量違いや品違いがあったという形でトラブルになる場合もあれば、輸入代行業者と税関に疑われて取引形態に関する質問を受けるという形でトラブルになることもあります。
輸出入通関でトラブルに遭遇してしまった際に、適切な対応ができなかった場合、税関の担当者から要注意業者として認識されてしまい、税関の検査を受ける頻度が上昇する可能性や輸入事後調査につながる可能性も否定できません。


貨物の輸入通関を行う場合には、今回述べたようなトラブルになる可能性があることを認識した上で、必要な検討、対応を行っていくことが重要です。

 


2 品目分類の認定に関するトラブル
関税定率法は、貨物の種類によって、品目ごとに番号を振って分類しています。これを品目分類といい、振られている番号のことを税番といったり、HSコードといったりします。
輸入時に生じる関税は、品目分類に応じて、それぞれの番号に定められた関税率を適用して計算されます。
したがって、関税を算出するには、品目分類の認定を行う必要がありますが、対象貨物が品目分類のどの番号に該当するかをめぐって、税関と意見が対立して、トラブルに発展することがあります。
関税は、日常的に行われる輸入で常時生じる種類の税金であるため、どの関税率が適用されるかによって、取引全体の収支が変わる可能性があります。そのため、場合によっては、取引の流れ全体を見直す必要が生じたり、輸入する製品の製造工程を変更する必要が生じたりなど、大きな問題に発展することも珍しくありません。

 


3 輸出入に関連する法令との関係で生じるトラブル
関税法や関税定率法といった関税関係法令は、輸出入を行う場合の手続を定めた法令ですが、輸出入に関して規制する法律は関税関係法令に限られません。例えば、食品衛生法は、事業者が食品等を輸入する場合、事業者に対し、検疫所に届出をすることを求めており(食品衛生法27条)、食品等を輸入する場合には食品衛生法の視点からの検討が必須となります。また、税関は、物品の種類に従って、輸出入を規制する関税関係法令以外の関連法令があるときは、当該関連法令に従って届出等が行われているかを確認する必要があります(関税法70条)。
このように、輸出入を行う場合、物品の内容に応じて、各種関連法令が求める手続を遵守していることが輸出入手続を行う前提として求められます。例えば、税関以外の他の行政組織(例えば、食品の場合は検疫所)との間で、適切なコミュニケーションができなかったり、法令の解釈適用に意見の相違が生じたりした場合には、スムーズに通関ができずトラブルに発展することがあります。

 

輸出や輸入を行う際には、対象物品毎に関連法令の適用の有無の検討を行うこと、適用がある場合には関係機関との事前交渉等を含めた対応を検討すること、トラブルとなった場合には法的根拠をもって関係機関や税関と交渉を行っていくことが重要です。

 

 

4 知的財産侵害物品と疑われるトラブル
関税法は、一定の貨物について、輸出入を禁止しています(関税法69条の2、同法69条の11)。違法薬物等であれば、輸出入してはいけないことは明らかですが、通常の事業の中で問題が生じやすいものとして、知的財産侵害物品(関税法69条の11第9号、第10号)と疑われることで生じるトラブルがあげられます。
著名な製品の模倣品であれば、一見して知的財産を侵害しており輸出入してはいけない物品だと認識できますが、知的財産にも様々なものがあり、簡単には判断できないものも少なくありません。特に意匠やデザインとなると、判断がつき難い場合も珍しくありません。場合によっては、税関に知的財産侵害物品と疑われて、知的財産侵害物品か否かを判断する手続(関税法69条の12等)に進むという形でトラブルになることがあります。また、税関の判断次第では、犯則事件に発展してしまう場合もあります。

 

 

5 禁制品と疑われるトラブル
知的財産侵害物品以外にも、禁制品を輸出入したのではないかと疑われてトラブルに発展することがあります。特に、商品の内容について適切な説明ができない場合には、客観的には禁制品に該当しない可能性があるのにもかかわらず、税関による禁制品という判断を覆すことができず、貨物の廃棄に応じざるを得ない場合や、犯則事件などに発展してしまう場合もあります。

 

 

当事務所では、輸入申告方法の是非の判断業務、税関事後調査への対応業務、輸出入通関に伴う税関・通関業者・取引先とのトラブルへのサポート業務を提供している他、貿易及び輸出入通関に関する様々なご相談に対応させていただいております。ご相談をご希望の場合は、電話又はメールにて、当事務所にお気軽にお問い合わせください。ご相談のお申込みはこちらから行うことも可能です。

2021.02.06更新

最近、中国等海外から送られてきた貨物の輸入代行をした事業者様から、通関時に税関の指摘や質問を受けたが、どう対応すればよいかといった内容のご相談を受けることが増えています。
背景には、中国等海外の事業者が、Amazon等を利用して日本で商品を販売する中で、日本に商品の在庫を置いておきたいという需要が生まれており、その需要に応えるために輸入代行を用いたビジネススキームが活用されている状況があるようです(以下、中国等海外の事業者が日本に在庫を置く目的で輸入代行依頼を行い、輸入代行業者が、当該依頼を受けて、商品を日本に輸入した上で、輸入代行業者自身の倉庫で保管したり、AmazonのFBA倉庫等に納品したりするビジネスを「本件輸入代行ビジネス」といいます。)。
しかし、本件輸入代行ビジネスに従事して、輸入代行を行う事業者は気を付けなければならない留意点があります。本日は、そのうちの3つの留意点をご紹介します。

 

1 輸入者としての義務と責任を負うこと
一つ目の留意点は、輸入者代行業者は、輸入者としての義務と責任を負うことです。
本件輸入代行ビジネスでは、輸入代行業者は、誰かに商品の販売を行うわけではなく、単に輸入した貨物を自社倉庫で保管したり、指定された倉庫に納入したりするだけに過ぎないので、自身が輸入者になるという意識が希薄になりがちです。

 

しかし、一旦、自身が輸入者として貨物を輸入した場合、関税関係法令上は、輸入手続きに関する当事者として、適切な輸入申告を行う義務や、輸入申告に問題があった場合の法的責任を負う立場になります。

 

たとえ、輸入代行業者が、輸入代行の手数料として、わずかな報酬を得ているだけであっても、輸入者としての義務や責任は減免されることはありません。
例えば、輸入申告額が間違っていた場合は、法的には輸入者が不足税額や過少申告加算税等を支払う義務が生じますし、輸入禁制品が送られてきてしまった場合には輸入禁制品を輸入しようとしたということで、刑事罰を含めた法的な責任を問われる可能性があります。
輸入代行業者は、自身が輸入者になることの意味を理解する必要があります。

 

2 申告価格の把握が困難であること
二つ目の留意点は、輸入申告時に申告すべき申告価格の把握が困難であることです。
輸入者は、関税定率法に沿った申告価格で適切に輸入申告する必要がありますが、本件輸入代行ビジネスでは適切な申告価格の把握が困難な場合があります。
輸入申告時の申告価格は、輸入取引における商品価格をベースに計算することが原則的な方法です(関税定率法4条1項)。
しかし、本件輸入代行ビジネスの場合、多くの場合、具体的な注文に応える形で輸入するのではなく、日本の在庫として保管するために輸入することになります。その場合、原則的な計算方法は採用できず、関税定率法に基づく例外的な計算方法で輸入申告を計算する必要が生じます(関税定率法4条2項、同法4条の2から同法4条の4)。
したがって、この場合は、単に輸出者が作成したインボイス価格や、中国等海外での販売価格をベースに輸入申告をすると、税関から申告価格の誤りを指摘される可能性があります。

 

例外的な計算方法は、関税定率法にいくつか定めがありますが、現在、税関の実務では、本件輸入代行ビジネスのような場合、大まかに言って、国内販売価格からの逆算による方法、すなわち、国内販売価格から、日本で生じる経費と利潤を引いた金額を計算して輸入申告を求めることが多くなっているようです(関税定率法4条の3第1項)。

 

しかし、国内販売価格をベースに計算するとしても、ネット通販の場合、商品の売れ行きや需給に応じて金額が日々変化することも多いと思います。また、本件輸入代行ビジネスのような取引では、輸入代行業者の商流に対する関与が限定的なため、商品の販売までに日本で生じる経費や利潤の把握が難しい場合も少なくありません。

 

上記1に記載したとおり、輸入代行であっても輸入者としての責任を負うため、申告価格の把握を誤ると、不足税額や過少申告加算税等の追徴税を支払うことになったり、法的な責任を問われたりする事態が生じ得ます。

 

3 税関が引き締めを強めていること
最後の留意点は、税関が引き締めを強めている状況にあることです。
最近、税関が、本件輸入代行ビジネスのような輸入に注意を向けており、引き締めを強めている傾向にあることも、ビジネスに伴うリスクとして認識しておく必要があります。

 

本件輸入代行ビジネスのようなビジネスの方法は、取引全体の実体把握や課税価格の評価が難しくなることから、税関として厳しい目を向けている状況にあると考えられます。
特に、2021年に入ってから、当事務所には、本件輸入代行ビジネスを行っている事業者様から、税関から指摘や質問を受けたという内容の相談が相次いで寄せられており、これまでとは状況が変化しつつあることを実感しています。

 

4 小 括
当事務所が見聞きした限りでは、本件輸入代行ビジネスは、中国等海外の事業者からの需要があることは確かであり、その点で魅力のある事業です。しかし、輸入代行に伴うリスクやオペレーションの難しさがあり、上記1から3で述べたようなリスク等があることを理解する必要があります。ビジネスに伴うリスクを認識した上で、対応策を検討し、事業を展開していただく必要があります。

 

 

当事務所では、輸入申告方法の是非の判断業務、税関事後調査への対応業務、輸出入通関にともなう税関トラブルへのサポート業務を提供している他、輸出入に関するビジネスモデルの改善のご相談にも対応させていただいております。ご相談をご希望の場合は、電話又はメールにて、当事務所にお気軽にお問い合わせください。ご相談のお申込みはこちらから行うことも可能です。

2020.09.16更新

当事務所では、事業者様から輸入管理体制の在り方についてご相談をいただき、サポートをさせていただいております。
本日は、そうした経験を通して、事業者様が輸入管理体制を見直すべきか否かを判断するためのポイントをご紹介いたします。

 

事業者様が輸入を行っている場合、輸入時に問題なく通関していたとしても、その後、適宜のタイミングまたは定期的に税関による調査を受けます。これは、適切に輸入申告を行ったかを確認する目的で行われるものであり、輸入事後調査といいます。
事業者様において、今までこの輸入事後調査を受けたことがなくとも、今後受ける可能性は否定できず避けることができない性質のものとなります。
このことを前提に、適宜のタイミングで、輸入管理体制の見直しを検討する必要があります。

 

1 輸入に係る契約や取引関係を適切に説明できるか
税関による輸入事後調査では、税関から、輸入取引の内容について質問されます。その際、輸入取引の各商流について、どのような登場人物がいるか、それぞれの役割、取引の進め方といったことを適切に説明できることが重要です。
また、説明した内容と整合しない内容の書類が作成されている場合、何故そのような書類が作成されているのかにつき、税関から質問を受けることがあります。その時に適切な説明ができないと更に追及されることもあり得ます。
もし、輸入取引について、作成されている書類に照らした適切な説明が難しいようであれば、輸入管理体制を見直すタイミングと考えられます。

 

2 輸入取引に関する法令に沿った検討ができているか
輸入取引には、様々な法令が関わります。そのため、輸入取引に関する法令との関係で問題ないかを検討しておく必要があります。
特に、輸入取引では、現地のエージェントに手数料を支払っていたり、親子会社間での取引であったりすることも多く、これらの場合には、関税定率法に照らして、課税価格の申告が適切かを検討する必要があります。事業者様が、税関に対して、適切な課税価格の設定である旨の説明が十分にできない場合には、税関から誤った申告であるとして関税・輸入消費税につき修正申告をする必要がある旨の指摘を受ける可能性があります。
もし、自社の輸入取引に関して、関税定率法をはじめとした法令との関係でどういう問題が指摘される可能性があるかにつき、把握ができていないようであれば、やはり輸入管理体制を見直すタイミングといえます。

 

3 記録保管体制が適切に整備されているか
税関の輸入事後調査では、輸入取引に関する資料の提出が求められます。当事務所が、輸入事後調査のサポートを行う際にもよくみられることですが、事業者の皆様において、税関に提出する資料の準備作業が負担となる場合があります。
特に、社内で、文書の管理について適切なルールが定められていなかったり、ルールを定めていたとしても守られていない部分があったりする場合、必要な書類の取寄せや整理という負担は大きなものとなり得ます。
また、平素から記録保管体制を行っていない場合、税関から、輸入事後調査の実施の連絡を受けてから書類の用意を行ったとしても、調査日までに書類が揃わないこともあります。
輸入取引に関する記録保管体制を点検してみて、不十分に感じられる場合には、輸入管理体制を見直すことをお勧めします。

 

当事務所には、通関士資格を有している弁護士がおり、輸入申告方法の是非の判断業務、税関事後調査への対応業務、輸出入通関にともなう税関トラブルへのサポート業務を提供しております。
交渉を業務の常とする弁護士が、通関士資格に裏打ちされた知見に基づき、税関との交渉の代理・アドバイスを行います(税理士は、税関に関する問題については、職務権限外となっております。)。

 

ご相談をご希望の場合は、電話又はメールにて、当事務所にお気軽にお問い合わせください。ご相談のお申込みはこちらから行うことが可能です。

2020.09.15更新

本日は、税関の輸入事後調査の結果、申告した納税額に誤りが発覚した場合の是正のための手続きについて、ご説明します。
申告した納税額に誤りがある場合、納税額を是正するための手続きは、輸入者が自ら是正を求める場合と、税関長が職権で是正を行う場合とに応じて、以下のように分類されます。

 

1 納税義務者が自ら是正を求める場合
(1)修正申告(関税法7条の14)
修正申告は、申告額に不足額がある場合に、輸入者が自ら行うものです。
修正申告を行った場合、申告済みの税額の内、正しい金額の部分については、税額として既に確定しておりますので、修正申告の影響は及びません。
修正申告をした不足税額部分が、納付すべき税額として新たに確定します。
(2)更正の請求(関税法7条の15)
更正の請求は、申告額が過大だった場合に、輸入者が自ら行うものです。
輸入者が更正の請求を行った場合、税関長による調査が行われます。そして、調査の結果、減額更正が妥当であると税関長が判断した場合に、税関長による減額更正が行われ、減額が確定します。

 

2 税関長が職権に基づいて是正する場合(関税法7条の16)
(1)更正
輸入者による申告額が過少又は過大であった場合、調査を経て、税関長が税額を更正します。
(2)決定
輸入者が輸入した貨物についての申告自体がなかった場合、調査を経て、税関長が税額を決定します。

 

輸入事後調査の際には、税関からの説明を受けて、修正申告を行うといった流れになる場合が多いですが、輸入事後調査の調査結果に対してどのように対応すべきは、事案ごとに大きく異なりますので、注意が必要です。

 

なお、上記のご説明内容は、申告納税方式において輸入者が申告した納税額に誤りが発覚した場合の手続きの概要です。税関長による決定により納付すべき税額が決まる賦課課税方式において賦課された税額に誤りが発覚した場合には、上記の手続きではなく、税関長が改めて賦課決定を行うという手続きが取られます(関税法8条3項)。
問題となっている輸入貨物が、申告納税方式の対象であるのか、それとも賦課課税方式の対象であるのか、といった視点にも注意が必要です。

 

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交渉を業務の常とする弁護士が、通関士資格に裏打ちされた知見に基づき、税関との交渉の代理・アドバイスを行います(税理士は、税関に関する問題については、職務権限外となっております。)。

 

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2020.09.14更新

本日は、申告納税方式と賦課課税方式について、ご説明いたします。


両方式は、輸入者が支払う関税額の確定方法の分類となります。
貨物を輸入する場合、基本的には、申告納税方式が採用されておりますが、輸入する貨物の内容や課税価格等を踏まえ、一定の場合には賦課課税方式が採用されております。
具体的には、以下のとおりです。

 

1 申告納税方式(関税法7条)
申告納税方式の対象となる貨物を輸入する場合、輸入者は、輸入申告の際に税関長に対して、当該貨物にかかる課税価格等の必要な事項を明らかにして関税の納付に関する申告をする必要があります。そして、輸入者による当該申告によって、輸入者が納めるべき税額が確定します。
申告納税方式の対象となる貨物は、賦課課税方式の対象となる貨物を除いた貨物です。

 

2 賦課課税方式(関税法8条)
賦課課税方式の対象となる貨物を輸入する場合、輸入者は、税関長の処分によって納付すべき税額が確定します。
賦課課税方式の対象となる貨物としては、例えば、以下のものがあげられます。
①入国者の携帯品、または別送品(ただし、商業量に達するものは申告納税方式が採用されます)
②郵便物(20万円以下の物品または寄贈品)

 

両方式の違いの概要は上記のとおりですが、輸入した貨物がいずれの方式の対象となるかによって、例えば納税額に誤りがあった場合の手続き等に違いが生じますので、注意が必要です。

 

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2020.06.30更新

本日は、税関の輸入事後調査の結果、輸入者に課される可能性がある加算税についてご説明します。


税関の輸入事後調査の結果、税関から申告漏れが指摘された場合、輸入者は、申告漏れに該当する関税及び消費税並びに延滞税に加えて、加算税を課される可能性があります。
加算税は、具体的には以下の①から③です。

 

①過少申告加算税、②無申告加算税、③重加算税

 

概要は、以下の通りです。

 

①過少申告加算税とは、申告した関税額に不足額があった場合に課せられる可能性がある税金で、原則として不足額の10%に相当する金額が該当します(関税法12条の2)。

 

②無申告加算税とは、申告が必要な貨物について申告せずに輸入していた場合に課される可能性がある税金で、原則として納付すべき関税額の15%に相当する金額が該当します(関税法12条の3)。

 

③重加算税とは、過少申告加算税又は無申告加算税が課される場合において、輸入者が納付すべき関税の課税標準又は税額の基礎とするべき事実について隠ぺい又は仮装行為を行っていた場合に課される可能性がある税金で、過少申告加算税又は無申告加算税に代えて課されます(関税法12条の4)。

 

加算税の概要は上記のとおりですが、実際に加算税の金額を計算する場合には考慮すべき複雑な規定等がありますので、ご注意ください。

 

当事務所には、通関士資格を有している弁護士がおり、輸入申告方法の是非の判断業務、税関事後調査への対応業務、輸出入通関にともなう税関トラブルへのサポート業務を提供しております。
交渉を業務の常とする弁護士が、通関士資格に裏打ちされた知見に基づき、税関との交渉の代理・アドバイスを行います(税理士は、税関に関する問題については、職務権限外となっております。)。

 

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2020.06.02更新

本日は、税関の輸入事後調査の結果、輸入者が負担する必要が生じる可能性がある税金等についてご紹介します。

 

具体的には、輸入者は、以下の①から③を負担する必要が生じる可能性があります。
①申告漏れに該当する関税及び消費税
②①に係る附帯税
③修正申告を行う場合に通関業者に支払う手数料

 

まず、①についてですが、輸入事後調査の結果申告漏れが発覚した場合に、支払済みの税額が本来支払うべき税額に不足しているときは、輸入者は、申告漏れに該当する関税及び消費税を支払う必要があります。
次に、②についてですが、①の申告漏れに該当する関税及び消費税がある場合、輸入者は、附帯税を支払う必要が生じる可能性があります。附帯税とは、過少申告加算税、無申告加算税、重加算税及び延滞税を指します(関税法第2条第1項第4号の2)。
また、③についてですが、輸入事後調査の結果、輸入者が修正申告を行うこととなった場合に、輸入者が当該修正申告を通関業者に依頼するときは、通関業者に対して手数料を支払う必要が生じる可能性もあります。

 

税関の輸入事後調査の結果、輸入者が負担する必要が生じる可能性がある税金等の概要は上記のとおりですが、実際に各金額を計算する場合には考慮すべき複雑な規定等がありますので、ご注意ください。

 

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交渉を業務の常とする弁護士が、通関士資格に裏打ちされた知見に基づき、税関との交渉の代理・アドバイスを行います(税理士は、税関に関する問題については、職務権限外となっております。)。

 

ご相談をご希望の場合は、電話又はメールにて、当事務所にお気軽にお問い合わせください。

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